行商レポート vol.24:neutron

courtesy of Kana Ohtsuki, neutron, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

ニュートロンのギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から


京都と東京にふたつの拠点を構えるニュートロン。5月末をもって京都の店舗を一旦閉店し移転する運びとなっており、変化の時期を迎えるギャラリーが個展形式で紹介するのは、大槻香奈さんです。今回出展された作品のようにアクリルを用いた絵画を中心として、写真や文章、イラストレーションなどジャンルに囚われない表現を続けている作家です。展覧会だけでなく、本の装丁や各種アートワークも手掛けています。作品に込めた思いについて、詳しくは比較的新しいステイトメントが大槻さんのHPのプロフィールに載っているのでそちらをご確認頂ければ。

制服を着ておらずより抽象的な作品もあったのですが、今回出展された作品の多くで制服を着ている少女が描かれています。その制服は少女らしさを現わすのではなく、個性を打ち消す為に用いられているのかな?作品によっては何かを纏っていたり、同化しないまでも体が薄れていたり、その白い肌、ある時はこちらを強く見据え、ある時は俯いているその視線なども、そういった意味を持っているような。ただ、一見そういった要素から、個としての主張をなくし、他者との関わりの拒絶しているポーズにも見えるのですが、その拒絶は、感情的な嫌悪や不寛容ではなく、精神においても肉体においても本質までは触れ得ない他者がそこに本当に存在しているのか、ということを意味しているように思いました。触れるってどれぐらいのことを指すのだろう、家族や友人、恋人など誰よりも愛するひとりのことだって分からない事ばかり。像が結ばれたと思った瞬間に霧となってまた触れられぬ相手を、どうすれば信じて、どうすれば無償の愛で接していけるのか。大きく開いた窓から射した光を浴び、冷たさと暖かさを帯びる大槻さんの作品を鑑賞しながらも、そんな事を考えていました。