行商レポート vol.19:花影抄

courtesy of each artist, Hanakagesho, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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花影抄のギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から


引きの写真がないっすね。ギャラリーの方に問い合わせて入手できそうだったら改めて更新します。
スミマセン。

今回は、現代美術作家の作る根付を世に広げるべく販売他、ギャラリーでの展覧会活動も展開する花影抄について。花影抄が紹介するのは以下の5名。根津の根付屋と言う事で、根付関連の作家として、伊多呂さん、森謙次さん、永島信也さん(※伊多呂さんは細密に描かれた平面作品を出展)の3名に加え、根付以外では張り子の荒井良さん、解剖学的なバックグラウンドを平面に立ち起こす小田隆さんになります。ブースの作品配置は荒井さんを中心に組み立てられていました。

さて、さりげなく根付と書いてしまいましたが、私は今回行商に花影抄が出展する事で初めて知りました。花影抄のHPを確認すると、「その昔、武士や町人たちが、巾着や煙草入れ、印籠などを帯に吊るす時につけた滑り止めのための留め具」なのだそうです。その根付が粋な男性の装飾品して発展し、実用を超えた鑑賞に堪え得る凝縮された美意識の現れとして結実したのが、美術としての根付、とのこと(詳しくは こちら から)小さい中に美しく作り込まれた細工も魅力的ですが、その素材感の濃縮具合は半端ないですね。浅学な私では説明を頂かないと分からなかったりしたのですが、じっくり見てみると本当に色んな素材が使われていて、目にも豊かです。

上記HPにも書いてありますが、根付は手にとってじっくりと眺めて楽しめる物で、作品の根底には日本特有とも言える、茶道具などに顕著であろう、「掌」(たなごころ)という文化があると思うのですが、作家さんやギャラリストさんに説明を受けながらお客様が自然とそういった文化に触れている姿は、鑑るにしろ買うにしろ、行商というフェアを楽しむ上で幅を与えていた様に思います。風呂敷画商ではありませんが、作品が入ったケースを抱えて作品をお客様に見せていた姿をまさに「Mr.行商!」と呼びたくなった永島信也さんとその作品は、そんな根付作家の中でも特に印象的でした。

荒井さんの張り子はギャラリー紹介にもある様に超絶技巧で、一般的に張り子という技法が使われている他の様々な工芸品などが頭に浮かばないぐらいでした。自らのバックグラウンドが存分に作品に活かされている小田さんの平面もそうかも知れませんが、型を知っているからこその型破りというか、ある一つの物事を突き詰める男のストイックさと、そこから生まれた異形に対する畏怖を感じる迫力でした。その表現技法が出来る事を拡張している様にも思えます。連想ゲームみたいな書き方になってますが、異形と言えば伊多呂さんの細密のおどろおどろしい世界もまた魅力的。額装でも軸装でもない(あれ何て言うんですかね?)独特な形で仕立てられた額面は、作品の持つ世界を磔にしている様で、あれが解き放たれたらどうなるんだろう、と勝手な妄想を掻き立てられちゃいました。