行商レポート vol.18:M7: MAQUIARTO 7TH FLOOR ART ROOM

courtesy of Keiko Iida, Chisato Saito, M7: MAQUIARTO 7TH FLOOR ART ROOM, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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愛称はえむななで!

えむななのギャラリー紹介は こちら から
えむななに関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


清澄白河東京都現代美術館の間近にあるマンションの7階にビューイングルームを併設した美術事務所を構える、アートプロデューサーのマキアルトが紹介するのは、'10年のアーティストファイルに出展した「気泡」シリーズで広く知られる事となった斎藤ちさとさんと、ユニークな制作アイデアから生み出された作品群が強く印象に残る飯田啓子さんのおふたり。斎藤さんは写真作品を額装で、飯田さんは写真作品をアクリルマウント、及び人形や立体作品を出展していますが、同時にマルチプルと言えばいいのでしょうか(迷うなよ)、ふたりの作品をM7エディションズとして手に入れやすいサイズと価格で販売していました。作品の発する魅力は変わらないので、おふたりの作品のファンになった方がに優しくていいですね。

只今(4月13日)は事務所代表のやのさんが出張しているみたいなので受け付けてはいないのですが、マキアルトとして協働している作家をビューイングルームで展示している時はその情報がギャラリーHPに載っているので、随時ご確認頂き、興味ある作家が展示をしていたら是非見に行って頂ければと。電話やメールで事前に予約しつつ、書いた通りマンションに入居しているので、オートロックの自動ドアを開ける為に、ギャラリーが入居する部屋番を押して中に入る事になります。ギャラリー巡りに馴れていてもドキドキしますが、中に入れば素敵な作品と素敵な代表が皆さんをお待ちしております。以上、ギャラリー紹介終わり。詳しくはHPを見てね。色んな活動をしている美術事務所です。

モチーフとなる様々な風景が、炭酸水の泡の向こうでユニークな表情を見せる斎藤さんの作品。泡そのものが持つ属性や社会的な意味合いの多様性から、観客が自ら作品に付与するコンセプトの味わいが幾らでも深くなる斎藤作品ではあるのですが、写った泡そのものの質感や、ピントの位置によって遠近感や輪郭を失う部分が作品毎に変わったりと、作品の持つ表情だけで素直に楽しめるます。個人的に好きなのは、泡から硬質な印象を受ける、ピントが泡に合っていて風景が完全にボヤけている作品です。現実に存在する泡が硬い訳はなく、コンセプトと技術が泡と言う存在に新しい意味を与えている様で面白いんです。輪郭を失った風景は泡が持つ何かしらの強度を表しているようで。弾けるからと言って即ち儚い、ではないんですよね。泡を成す水は生命の源だし。作品の出発点として素粒子論や宗教観もあったりするそうで、見た目にシンプルな作品の持つ意味は相当に深そうです。

飯田啓子さんは身近な物・食べ物をスキャンし、それらが持つ思わぬ美しさやそれらに対して持つ我々の思いを掬い上げるシリーズの写真作品に、切手の貼られた双頭のダルマ、ボタンで作られた人形の「ボタンズ」などなどを出展。中でも特に印象的だった、食べ物をスキャンしたシリーズについて。黒い背景に映えるキャラメルやおかき、桃缶の色彩が、殊のほか綺麗でビックリする訳です。個人的にはキャラメルを包む紙の可愛さがツボでした。何でもかんでも身近な物を無造作にスキャンしまくる訳ではないと思いますし、さり気ない選択の中に飯田さんの色に対する意識の高さを感じます。作品を作品足らしめる理由は他にあるのかも知れませんが、何気ない日常の中に美しさを見つける事が上手な作家なんだろうなぁと。同じシリーズとして括っていいのか分かりませんが、コンビニ弁当をコンビニでスキャン(要はコピー)し作品とする「メイド・イン・コンビニ」は、行商当日はブックで見れた筈ですが、そちらもユニークで面白いですよ〜。