行商レポート vol.08:SAVE TOHOKU PROJECT

courtesy of each artist, SAVE TOHOKU PROJECT, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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SAVE TOHOKU PROJECTの紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から。


東北地方太平洋沖地震の復興支援チャリティーとして企画された、SAVE TOHOKU PROJECT。美術を通したチャリティーが取り得る形は様々だと思いますが、諸々の垣根を超え、東北の、そして日本の復興に対する支援に賛同した作家などが作品を出品することで、このプロジェクトはアートフェアに参加するという形で企画を実行しました。美術に限らずチャリティーの為に何か行動をすると、そこには賛否両論があり、またどういったプロセスを取るべきかという議論には尽きる所がない物なのかも知れません。こちらが行商というアートフェアのオフィシャルブログであり、このチャリティーを仔細に説明する為の場ではない、というのもありますが、このプロジェクトに寄せられた意志や思いを損ないたくないという個人的な考えもあり、ステイトメントを公式HPから引用するに留め、他の出展者と同じく、見るを楽しむという視点でレビューを書いて行ければ、と思います。


【Statement】

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
まずはじめに、私たちは法人でも、団体でもありません。アートを介して知りあい広がった友人であり、知人です。そんな私たちが東北地方を中心に被災された方々の支援として何ができるのか?を考えました。私たちを突き動かすのは、アートを介して生まれた「絆」に他なりません。一人ではなにもできなくても、この想いに賛同いただける方々が集まれば「大きなチカラ」となる。
そこで、日頃からお世話になっている美術作家、ギャラリーをはじめとしたアートに関わる人々のお力をお借りしてチャリティー展示という形で義援金を集めることを考えました。そして、有志による東北地方太平洋沖地震支援チャリティー企画「SAVE TOHOKU PROJECT」を立ち上げます。
4月1日〜4月3日に開催するアートフェア「行商〜ギャラリー・サーカス」への出展が決定しております。皆様のご支援をお待ち申し上げます。

さて、今回のプロジェクトに賛同し出展した作家陣は次の通り。人数が多いので敬称略で失礼します。全員にさん、さんって付けてったらなんかバランス崩れません?崩れませんか。それぞれの作家についてより詳しくお知りになりたい方は、HPに作家HPへのリンクがあるので、そちらからご覧ください。

青木美歌/岩田俊彦/上野紗代/開発好明/衣川泰典/興梠優護/境貴雄/中村ケンゴ/矢津吉隆/吉本直子/渡辺おさむ

「ひときわ目を引いた作家は…」というくだりから文章を始めようと思ったんですが、これだけ多くの作家が集まり技法・素材や作品サイズがバラエティに富む中で、どの作品も同じくらいの強さで印象に残っています。作品は多かったのですが、壁もブース全体も雑然とはしてはおらず、綺麗に纏められていた感があります。

フェアに行かれた方の中で、空間の使い方もあって、ガラス作品が印象的な青木さんの作品を覚えているという人は多いのではないでしょうか。ライトボックスに置かれて幻想的な光を纏っていました。黒白エナメルで描かれた円形の大きな作品は、矢津吉隆さんの作品。赤系のペンシルで何かに溶け入る様な特徴的なドローイングを5点(元々3点で最終日に2点追加)出展していたのは興梠さんです。ひとや空間を抽象的な処理で描いた作品としては、非常に高い質を誇っていたと思います。岩田さんは漆の小作品を出展、上野さんはひょうきんな表情を持った木彫の小作品を複数出展です。中村ケンゴさんは日本画の技法を取り入れたポップな「Re」の作家。伝統的な技法が現代的に、あるいはその技法らしさが活かされる形で、様々な表情を見せてくれています。上野さんの作品を見ていると、どうにも某笑点メンバーの「ちゃら〜ん」というギャグが頭をよぎるのですが、如何でしょうか?(何じゃそりゃ)

開発さんは「何処でも生け花」シリーズの写真作品を2点。こちらに関しては、開発さんのHP上で引き続きチャリティとして購入出来る様です。未来への希望を象徴した花と言えるのかもしれませんが、そのアイデアがシンプルに面白いです。衣川さんは抑えめな色彩の大きなコラージュ作品、ブース全体の写真の中でも特に目立っていますね。境貴雄さんはアズラーのお兄さんです。画像掲載のバランスからPHOTOSTREAMに写真を載せていますが、今回のアズラーは缶。吉本直子さんは国内外で広く活動する作家で、古着のシャツやハンカチが本や抽象的な立体で再生している様が印象的。渡辺さんは食品サンプル技術を用いたお菓子のデコレーション、「フェイククリームアート」で有名な作家ですが、今回の出展作品はいつもとは一味違う感じ、よりコンセプチュアルな画面になっていました。

と、駆け足で出展内容を紹介してきました。先に書いた通り、今回のプロジェクトに賛同し行商の場に集まってきた作家陣ですが、どの作家も着実な活動を続けているので、美術に作家に興味を持っていればまたすぐに巡り合えると思います。チャリティーではありますが、他のギャラリーと同様に、作家作品との良い出会いがこちらから生まれていれば、何よりですね。