行商レポート vol.11:FUMA CONTEMPORARY TOKYO|BUNKYO ART

courtesy of each artist, FUMA CONTEMPORARY TOKYO|BUNKYO ART, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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フマ・コンテンポラリー・トーキョー|文京アートのギャラリー紹介は こちら から
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「蒼白の表層」という企画タイトルで3名の作家を紹介した、フマ・コンテンポラリー・トーキョー|文京アートについて、今回は更新します。出展作家は小林美樹さんに鈴木弥栄子さん、加藤大介さんです。ギャラリーHPで今回の出展内容について確認すると、曰く「一様に刹那的で、密かな暴力性を感じさせ」る作品ラインナップになっているそう。共通した特徴は、所謂油画や木彫作品に見えるそれらの「表層」には、作品の存在感と意味を強くする技法が使われているということ。

小林さんの作品は2点の油画で、片方ではおかっぱの女の子が背中に担いだ何かから吹いた煙で空を飛んでいる…一体何をしているんだ!!?この世との決別??もう一枚の作品では孫と思しき三人の子供がおじいさんに有り得ない形で纏わりついている…シュールで不思議な世界観です。スパッタリングという荒い小さな粒子を画面に飛ばす手法は、絵に薄い膜を掛けているようで、描かれた対象の輪郭はしっかりとしていますが、どこかぼやけさせた雰囲気も感じるので、尚更シュールに感じるのかもしれません。

鈴木さんの作品に特徴的な、ボルドーカラーか赤か、そんな感じの色のハイヒール。誰かが履いているハイヒール。鏡に映っているものと、宙に浮いている様に見えるもの、2点のペイントが出展されていました。「鏡に映っている」と書いた作品のタイトルは「優雅の小窓」なので、窓というか広義の意味でのこちらとあちらを区切るフレームの様な物かもしれません。そう考えると、となりで浮いている様に見える脚は、死のメタファーに見えて仕方ないですね。色も色ですし。それは私の妄想に過ぎないとは思いますが、ハイ。鈴木さんの作品にはグレーズ技法による処理が為されているようです。「グレーズと呼ばれる透明の膜を塗って色彩に光沢と深みを加える」(ターナー社HPより)技法だそうで、あの独特な光沢感は開かれた場所での採光やライティングだけじゃなく、絵画自体が持つ「光」だったんですね。

加藤さんは、僕と漢字違いで同姓同名の作家さんです。いらない情報ですね、ハイ。加藤さん済みません。「漆と麻布を用いた立体表現」(ギャラリーHPより)で女性立像を3点出展されていました。立像の土台となる部分は木だと思うんですが、それがそのまま一般的な木彫作品だと思っていたので、漆による技法が使われていた事に、今更ビックリしています。キャプションはちゃんと見ておくものですね(コラコラ)並ぶ3人のその佇まいに、どこかパフュームを連想してしまいました。スカートの長さや靴は違えど、3体とも統一感のあるユニフォームみたいな感じの服を着ていますからね。頭には葉に巣食う(?)青虫や蝸牛、蜂をリアルに描いた彫刻が乗っています。虫が苦手な人間なので、そのリアルさにおびえつつその表現力造形力に感心し近寄って見ると、何となく女の子の表情が見えそうだったので、下から覗いてみました。

( ゚д゚ )

なんて眼力。無表情系なんだけれども。気付いて覗いてビックリしました。女性の独特な肌色と目線はある意味、心の硬直や生きていなさを表している様にも見えたけれど、さっきから怖いとか苦手とか書いている昆虫は、生命力の現れでもあるんですよね。それぞれの女の子の心の内を現わしているかも知れません。このレビューで毎度同じ事を書いている気がしますが、不思議なバランスが味わい深くて良い彫刻ですね。今後が楽しみな作家です。