行商レポート vol.12:GALLERY MoMo

courtesy of Yoshiko Fukushima, GALLERY MoMo, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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ギャラリー・モモのギャラリー紹介は こちら から
ギャラリー・モモに関しては撮影した全ての画像(1点除く)を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


ギャラリーモモが行商の場に選んだ作家は、福島淑子さん。ブース上では個展形式での出展ですが、会場には同時期に開催されていた川島小鳥さんの写真集「BABYBABY」と「未来ちゃん」の2冊が置いてあり、自由に読む事が出来ました。福島さんは06年のシェル美術賞で審査員賞、07年には同賞でグランプリを受賞している気鋭の作家です。主に人物が描かれていますが、塗られた絵具の色彩の組み合わせというか、描かれたひととひとの組み合わせというか構図の感覚というか、とても不思議なバランスで謎も多く、それが魅力的だったりします。思い返せば随分とアグレッシヴに感じる、子供の頃読んだ絵本や教科書の挿絵が持っているシュールさも、個人的には福島さんの絵からは感じたりします。実際子供向けのコンテンツに登場する絵とか人形とかって、福島さんの絵と比較しては見当外れになってしまう位に、よく理解出来ないシュールさ加減だったりしますが、そういう対比を踏まえて絵本で言うなら、福島さんの絵は大人の絵本なのかなと、根拠ない事を考えてみたり。抽象的な感触がある人物が何かをしていると、マティスを思い出したりもしますが、それは私の全くの見当違いかも知れません。重苦しいまでの背景の色彩の中で寒色の肌を持つ人物が描かれた作品は、ブースから遠い場所に居ても目立っていましたね。それだけに、一対の組み合わせで制作されたと思しき、向かい合う顔を描いた作品のシンプルさが展示全体の中でも特に、味わい深い物になっていたと思います。

行商レポート vol.11:FUMA CONTEMPORARY TOKYO|BUNKYO ART

courtesy of each artist, FUMA CONTEMPORARY TOKYO|BUNKYO ART, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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フマ・コンテンポラリー・トーキョー|文京アートのギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から。


「蒼白の表層」という企画タイトルで3名の作家を紹介した、フマ・コンテンポラリー・トーキョー|文京アートについて、今回は更新します。出展作家は小林美樹さんに鈴木弥栄子さん、加藤大介さんです。ギャラリーHPで今回の出展内容について確認すると、曰く「一様に刹那的で、密かな暴力性を感じさせ」る作品ラインナップになっているそう。共通した特徴は、所謂油画や木彫作品に見えるそれらの「表層」には、作品の存在感と意味を強くする技法が使われているということ。

小林さんの作品は2点の油画で、片方ではおかっぱの女の子が背中に担いだ何かから吹いた煙で空を飛んでいる…一体何をしているんだ!!?この世との決別??もう一枚の作品では孫と思しき三人の子供がおじいさんに有り得ない形で纏わりついている…シュールで不思議な世界観です。スパッタリングという荒い小さな粒子を画面に飛ばす手法は、絵に薄い膜を掛けているようで、描かれた対象の輪郭はしっかりとしていますが、どこかぼやけさせた雰囲気も感じるので、尚更シュールに感じるのかもしれません。

鈴木さんの作品に特徴的な、ボルドーカラーか赤か、そんな感じの色のハイヒール。誰かが履いているハイヒール。鏡に映っているものと、宙に浮いている様に見えるもの、2点のペイントが出展されていました。「鏡に映っている」と書いた作品のタイトルは「優雅の小窓」なので、窓というか広義の意味でのこちらとあちらを区切るフレームの様な物かもしれません。そう考えると、となりで浮いている様に見える脚は、死のメタファーに見えて仕方ないですね。色も色ですし。それは私の妄想に過ぎないとは思いますが、ハイ。鈴木さんの作品にはグレーズ技法による処理が為されているようです。「グレーズと呼ばれる透明の膜を塗って色彩に光沢と深みを加える」(ターナー社HPより)技法だそうで、あの独特な光沢感は開かれた場所での採光やライティングだけじゃなく、絵画自体が持つ「光」だったんですね。

加藤さんは、僕と漢字違いで同姓同名の作家さんです。いらない情報ですね、ハイ。加藤さん済みません。「漆と麻布を用いた立体表現」(ギャラリーHPより)で女性立像を3点出展されていました。立像の土台となる部分は木だと思うんですが、それがそのまま一般的な木彫作品だと思っていたので、漆による技法が使われていた事に、今更ビックリしています。キャプションはちゃんと見ておくものですね(コラコラ)並ぶ3人のその佇まいに、どこかパフュームを連想してしまいました。スカートの長さや靴は違えど、3体とも統一感のあるユニフォームみたいな感じの服を着ていますからね。頭には葉に巣食う(?)青虫や蝸牛、蜂をリアルに描いた彫刻が乗っています。虫が苦手な人間なので、そのリアルさにおびえつつその表現力造形力に感心し近寄って見ると、何となく女の子の表情が見えそうだったので、下から覗いてみました。

( ゚д゚ )

なんて眼力。無表情系なんだけれども。気付いて覗いてビックリしました。女性の独特な肌色と目線はある意味、心の硬直や生きていなさを表している様にも見えたけれど、さっきから怖いとか苦手とか書いている昆虫は、生命力の現れでもあるんですよね。それぞれの女の子の心の内を現わしているかも知れません。このレビューで毎度同じ事を書いている気がしますが、不思議なバランスが味わい深くて良い彫刻ですね。今後が楽しみな作家です。

行商レポート vol.10:H-art Beat


courtesy of each artist, H-art Beat, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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ハートビートのギャラリー紹介は こちら から
ハートビートに関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


建築や空間に相応しいアートワークを、顧客の要望に応えプランニングから納入までを請け負うハートビートは、現在はギャラリースペースを持たない営業を続けていますが、これまでの海外のアートフェアへの出展を含め、他の行商出展ギャラリーと同様に、より広いお客様に素晴らしい美術とその価値を訴えて行けるよう、活動の幅を広げています。国内のアートフェアは今回が初出展になります。って、出展者じゃないのにこんな文章書いちゃって、なんか済みません。美術をお客様の元に届ける仕事の在り方って、色んな形を取り得るんですよね。

出展作家は3名。今井龍満さん、坪田昌之さん、三田健志さんの3名。これから筆者なりのレビューを書いて行きますが、他の出展者と比べて、一見大人しくまたスタイリッシュだったハートビートの作家作品は、知れば知るほど良い意味でひと癖もふた癖もありました。勿論あるがまま見て楽しめる内容でしたけれども。床に置いた紙に絵具(主にエナメル塗料を使われるそうです)を垂らして動物や女性を描くのは今井さん。その技法により偶然性をも内包して描かれた自由な線は、その力強さや奔放さを十二分に表現しています…って書こうと思ったんですけど、会場では垂らして描かれたと気付かなかったので(自分だけなのか…自分だけなのか…)、ディレクターの西山さんに質問しなかったぐらい、高度なコントロール力に驚嘆です。色彩のバランスも相当グッドです。

坪田さんが彫刻に扱う木はシナノキ(Basswood)というそうですね。ちょっと調べたらフェンダーはエレキのボディに使われているそうです。いきなり余談から始まりましたが、上品なクラシックやジャズの調べが聴こえて来そうな坪田さんの作品の支持体が、エレキに使われる物と同じっていうのも、何だか意外な感じが。余談終了。大きな作品が幾重もの層から構成されている作品だからか、彫りのみで制作された作品も、遠目に層が積み重なっている様に見えました。ミニマルと言うには、手業の暖かさが強い気がするのですが、その豊かな色彩と色彩のパターンは、どこかミニマルアートを思い出させます。

全てのキャプションを覚えている訳ではないのですが、HPを確認する限り、三田さんの作品タイトルの多くには等高線という言葉が含まれています。当然ながら等高線は現実には引かれてはいないので、実世界では見えない線ということで無形線とも言うそうです。具体的な何かが映っていながら、現実味を欠いた面白い浮遊感がある作品にはうってつけのタイトルですね。作品画面の中にある曲線を捉えてのタイトルかもしれません。一体どこから何を撮っているのか、三田さんに聞けば分かるのですが、想像するのも楽しい懐の深さを感じる作品です。ちなみに、筆者が以前東京で見た三田さんの個展には、何かに反射して映る景色を撮影した作品もありました。それは一体虚像・実像のどちらなんでしょう?

行商レポート vol.09:TEZUKAYAMA GALLERY

courtesy of each artist, TEZUKAYAMA GALLERY, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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テヅカヤマ・ギャラリーのギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から。


大阪から出展のテヅカヤマ・ギャラリーを紹介。4月4日の深夜に放映された「汐留ギャラリーハウス」という番組では、商人(あきんど)ギャラリストとして紹介されていた松尾良一さんはこちらの代表です。創立平成4年という事は、来年で20周年になるんですね。主な取扱として紹介されている作家陣は若手〜中堅が多くフレッシュな感じがして、大御所ギャラリーのひとつながら常に攻めの姿勢を崩さない強さと潔さがありますね。行商への出展作家は3名。住吉明子さんに上原浩子さん、大江慶之さん。出展作品の全てが立体作品です。立体のみでの出展ギャラリーは今回はテヅカヤマ・ギャラリーのみです。

住吉さんは石粉粘土を用いた可愛い動物の作品を沢山出展。どこかアニメの動物キャラクターに見えなくもない現実には存在しない動物は、見た目とっても可愛いのですが、その白さからどこか神獣に見えたり、作品によって体の一部となっている花が内臓を表に出している様に見えたり、ただの可愛いでは済まされない異形さが面白かったです。横並びに設置されたうさぎみたいな小作品はそんな穿った見方しなくても素で可愛いです。このブログで何回可愛いって言ってるんだろう、自分。

上原さんの作品は、向かい合わせに座る上体のみの2体の人物像。あなたに触れる為の手とあなたに歩み寄る足、深く交わる性的な部分、それらは途中から溶けてなくなっているようです。膨らみのあるようなないような乳房は性別を不詳にしています。思慮深い表情をしたふたりは、世の中のありとあらゆる常識的なものから外れた世界にふたりだけで生きて、二度と触れあうことはなくてもあるいはそれが必要ないぐらい深く理解し合っているよう。また、どれだけ理解し合っていても、他人同士がひとつになることは出来ず、溶けた部分は相手を理解したいという渇望の現れにも見えます。ハイっ、妄想失礼しました!

程なくギャラリーで個展が開催される大江さんは、骸骨の形に組まれたお花を被った子供の立体作品を出展。1点のみの出展だったのですが、その存在感は非常に強く、併せてブースに置かれていた大江さんの作品を紹介する冊子を熱心に読んだり買われているお客様も多くいました。花が骸骨になっているって、言われるまで気付きませんでした。鈍感で済みません。その事にも気付かないぐらい、そもそもの表現力技術力に感心していたという事で、ひとつ許してやってください。ギャラリーのアーティストページも見て頂きたいのですが、何ともいえぬ表情をした子供が何かをしたり何かを持ったりしている作品が、平面立体に問わず多いようです。立体を見ると感心するばかりの丁寧な作りなのですが、昆虫と子供をフィーチュアさせた作品などは、昆虫のリアルさが怖いぐらい。それを子供が抱きかかえるという有り得ないサイズ感(全体としては小作品と言える大きさなのよ)の面白さは、まだ見ぬ大江さんの他の作品をいつか目の前で見たいなぁと、期待させられるばかりなのですが、実際見たらやっぱり昆虫の部分に関しては怖いんだろうな。

行商レポート vol.08:SAVE TOHOKU PROJECT

courtesy of each artist, SAVE TOHOKU PROJECT, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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SAVE TOHOKU PROJECTの紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から。


東北地方太平洋沖地震の復興支援チャリティーとして企画された、SAVE TOHOKU PROJECT。美術を通したチャリティーが取り得る形は様々だと思いますが、諸々の垣根を超え、東北の、そして日本の復興に対する支援に賛同した作家などが作品を出品することで、このプロジェクトはアートフェアに参加するという形で企画を実行しました。美術に限らずチャリティーの為に何か行動をすると、そこには賛否両論があり、またどういったプロセスを取るべきかという議論には尽きる所がない物なのかも知れません。こちらが行商というアートフェアのオフィシャルブログであり、このチャリティーを仔細に説明する為の場ではない、というのもありますが、このプロジェクトに寄せられた意志や思いを損ないたくないという個人的な考えもあり、ステイトメントを公式HPから引用するに留め、他の出展者と同じく、見るを楽しむという視点でレビューを書いて行ければ、と思います。


【Statement】

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
まずはじめに、私たちは法人でも、団体でもありません。アートを介して知りあい広がった友人であり、知人です。そんな私たちが東北地方を中心に被災された方々の支援として何ができるのか?を考えました。私たちを突き動かすのは、アートを介して生まれた「絆」に他なりません。一人ではなにもできなくても、この想いに賛同いただける方々が集まれば「大きなチカラ」となる。
そこで、日頃からお世話になっている美術作家、ギャラリーをはじめとしたアートに関わる人々のお力をお借りしてチャリティー展示という形で義援金を集めることを考えました。そして、有志による東北地方太平洋沖地震支援チャリティー企画「SAVE TOHOKU PROJECT」を立ち上げます。
4月1日〜4月3日に開催するアートフェア「行商〜ギャラリー・サーカス」への出展が決定しております。皆様のご支援をお待ち申し上げます。

さて、今回のプロジェクトに賛同し出展した作家陣は次の通り。人数が多いので敬称略で失礼します。全員にさん、さんって付けてったらなんかバランス崩れません?崩れませんか。それぞれの作家についてより詳しくお知りになりたい方は、HPに作家HPへのリンクがあるので、そちらからご覧ください。

青木美歌/岩田俊彦/上野紗代/開発好明/衣川泰典/興梠優護/境貴雄/中村ケンゴ/矢津吉隆/吉本直子/渡辺おさむ

「ひときわ目を引いた作家は…」というくだりから文章を始めようと思ったんですが、これだけ多くの作家が集まり技法・素材や作品サイズがバラエティに富む中で、どの作品も同じくらいの強さで印象に残っています。作品は多かったのですが、壁もブース全体も雑然とはしてはおらず、綺麗に纏められていた感があります。

フェアに行かれた方の中で、空間の使い方もあって、ガラス作品が印象的な青木さんの作品を覚えているという人は多いのではないでしょうか。ライトボックスに置かれて幻想的な光を纏っていました。黒白エナメルで描かれた円形の大きな作品は、矢津吉隆さんの作品。赤系のペンシルで何かに溶け入る様な特徴的なドローイングを5点(元々3点で最終日に2点追加)出展していたのは興梠さんです。ひとや空間を抽象的な処理で描いた作品としては、非常に高い質を誇っていたと思います。岩田さんは漆の小作品を出展、上野さんはひょうきんな表情を持った木彫の小作品を複数出展です。中村ケンゴさんは日本画の技法を取り入れたポップな「Re」の作家。伝統的な技法が現代的に、あるいはその技法らしさが活かされる形で、様々な表情を見せてくれています。上野さんの作品を見ていると、どうにも某笑点メンバーの「ちゃら〜ん」というギャグが頭をよぎるのですが、如何でしょうか?(何じゃそりゃ)

開発さんは「何処でも生け花」シリーズの写真作品を2点。こちらに関しては、開発さんのHP上で引き続きチャリティとして購入出来る様です。未来への希望を象徴した花と言えるのかもしれませんが、そのアイデアがシンプルに面白いです。衣川さんは抑えめな色彩の大きなコラージュ作品、ブース全体の写真の中でも特に目立っていますね。境貴雄さんはアズラーのお兄さんです。画像掲載のバランスからPHOTOSTREAMに写真を載せていますが、今回のアズラーは缶。吉本直子さんは国内外で広く活動する作家で、古着のシャツやハンカチが本や抽象的な立体で再生している様が印象的。渡辺さんは食品サンプル技術を用いたお菓子のデコレーション、「フェイククリームアート」で有名な作家ですが、今回の出展作品はいつもとは一味違う感じ、よりコンセプチュアルな画面になっていました。

と、駆け足で出展内容を紹介してきました。先に書いた通り、今回のプロジェクトに賛同し行商の場に集まってきた作家陣ですが、どの作家も着実な活動を続けているので、美術に作家に興味を持っていればまたすぐに巡り合えると思います。チャリティーではありますが、他のギャラリーと同様に、作家作品との良い出会いがこちらから生まれていれば、何よりですね。

行商レポート vol.07:GALLERY ZERO


courtesy of each artist, GALLERY ZERO, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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ギャラリー・ゼロのギャラリー紹介は こちら から。
ギャラリー・ゼロに関しては PHOTOSTREAM の写真もほぼ同一内容です。


行商には東京以外のギャラリーも参加していました。そんな中から大阪のギャラリー・ゼロを紹介します。今回は高橋将貴さん、桑原正彦さん、坂井淑恵さんの作品による出店です。アートフェア東京に出展経験のあるギャラリーなので、関東在住の人でも名前を記憶している人はいるかも知れません。

高橋将貴さんは石膏の具象彫刻とアクリルによる平面作品を出展。皆さん外国の人に見えますね。ギタリストは明らかにギタリストなんですが、キャプションを覚えていないのもあり(←オイ、コラ)何の職業か何をしているのか、平面に関しては説明がなければ何をモティーフにしているのか(タスキを掛けている男性は選挙候補者かか宴会部長か、耳に何かを当てている男性は音楽を聴いているのかサンダーバードに乗ろうとしているのか)、どの作品も無表情故に却って強い印象を残します。真面目な表情か、目的があってのポーカーフェイスなのか。さっきから自分の妄想に基づいた二項の選択ばかり挙げていますが、具体的な何かを描いているけれど、想像の余地もある。個人的に深みを感じる作品です。

高橋さんの作品の隣には、桑原正彦さんと坂井淑恵さんの作品がそれぞれ混ざる様に展示されています。L字型の短い方、縦二つに並ぶ作品は坂井さんの作品ですね。水で浸された人の頭に雨が降るシュールなペイントや、木の肌を描いた様なドローイングもありましたが、光や水面をモティーフにしていると思しき(ちょっと調べてみた)坂井さんの抽象画は、光や水そのものが持つ空間性、人間の認識じゃ捉えきれないそれらの広がりをも描きだしている様に見えました。自分の近くに置いて、心を投影するには打ってつけの作品だったんじゃなかろうかと。

桑原さんの作品は、あ〜、もう、可愛い!ですね。終了!って〆てしまいそう。可愛いだけ書いてちゃ物事の表層しか見ていない気もして、じゃあ可愛いって何なんだろうと、答えのない問いが生まれる…素直に作品を見ていないですねぇ。私が見て思う可愛いは、普遍的な可愛いなのか。繊細な人はその可愛いの裏側にグロテスクなまでの何かを見つけているのか。単純な感想が先立ち過ぎると、描かれた対象が織りなす物語に潜む本質めいたものを見つけたくなります。桑原さんの作品と向かい合ってそんな事ぐにゃぐにゃと考えちゃうのは、私だけでしょうかね。私だけでしょうきっと。

行商レポート vol.06:unseal contemporary

courtesy of Kumiko Negami, Daisuke Tamano, unseal contemporary, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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アンシール・コンテンポラリーのギャラリー紹介は こちら から。
他の展示風景・作品画像は こちら から。

本日3件目の更新はアンシール・コンテンポラリーの紹介です。出展作家は木彫がねがみくみこさん、油彩が玉野大介さんです。作品が展示される壁がオレンジ色に塗られていて(何か貼ったのかも)、まずはそれに目を引かれ、近づいてみるとふたりのシュールな作品世界が広がっています。

ねがみさんの木彫は年始のBunkamuraギャラリーで開催された「ネオ・リアリズム」で見ていましたが、何ともいえずご上品ではない感じが楽しゅうございますわ♪それぞれの作品が何をしているか、それだけでも笑えるんですが、その表情がまた何ともいえず面白いんです。造形で子供が笑い、作品の持つ間を含めて大人も笑う、笑いの間口が広い…笑いしか書いてないですね(汗)ご本人は真面目に制作に取り組まれている…ハッ、ひとを笑わせるのに本気になる芸人さんのスタンスが思い当ってしまいました。玉野さんの作品については、ご本人のHPより各作品に添えられた文章を読んで頂いた方が、そのシュールな世界の源を感じて頂けるかもしれません(手抜きじゃないよ)今回出展された作品の中でも新しい物については記載がないかも知れませんが。エスカレーターで上る白無垢姿の女性や、何かを担いでいる人達、人間じゃない何かも描かれていたりして…筆者の拙い表現力ではシュール以外の言葉が今は見当たらない玉野ワールド、強烈な個性!という言葉ともまた違う独特さは、現在アンシールで開催されている激凸展で玉野さんの作品も見れる(画賊というユニットとして出展)のでご興味をもたれた方は是非ご覧くださいませ。9日まで!